【扇・おうぎ】

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【扇・おうぎ】


 扇は風を起こして涼をとるため8世紀に日本で考案された折りたたみ式の道具です。名称は歴史仮名遣いの「あふぎ」、つまり「あふぐ(煽ぐ)」から始まったという説が有力です。その形状から末広がりの「末広」という佳名で呼ばれる縁起の良さと優美な形から、瑞祥的な意味を持っています。

 扇紋を用いる有名な一族として佐竹氏が挙げられます。鎌倉幕府が成立した頃に、将軍源頼朝が自分と同じ白旗を持って参じた佐竹四郎を咎め、月が描かれた扇を下賜して代々家の旗印とさせ、やがて佐竹氏の家紋となりました。また那須氏は、有名な那須与一が屋島の戦いの折に平家方の船に掲げられた扇を射落としたという故事から、現代の那須姓では日の丸扇の家紋が多く用いられています。でも日の丸の扇と月の丸の扇は、白黒のカラーで描かれる家紋では、全く同じ形になってしまい区別が付きません。

 無地の扇紋が多いのですが、名称として使われている骨の数で区別します。また、骨を描かず扇面だけの「地紙」や、逆に地紙を描かず骨だけの「扇骨」という家紋もあります。これらは扇紋から派生した家紋です。

 大名家では出羽国久保田藩の佐竹氏、肥前国島原藩の松平(大河内)氏など、幕臣では80余氏が用いています。